マグロ名人との出会い
せちがない世になり、笑顔も失せたリーマン生活に疑問を持ち、
私はまず漁業を候補にあげ、知ってみたいという衝動にかられた。
どうせ獲るなら、マグロみたいなデッカイ奴がいい。
そうして、ここ大間町まで、やって来た。そこで大間の漁師として40年のベテラン、通称「ゲンさん」と出会った。
さっそく私はマグロ漁を知りたい、漁師になりたいと申し出た。「15(歳)の時から、沖さ出で、40年になるが、
その(歴史)中でも、マグロの魅力は最高だべさ。」と
ゲンさんは語り出した。この大間はなぁ、近海マグロの産地どして、昔っがら
1匹獲れれば、ひゃぐまんえん!の夢ば追ってる漁師で
溢れでるんだ。多い時で100隻近い船が、マグロを追って、ゴッタ返す!
何年間も、特大マグロが釣れない漁師もいるが、1匹釣れればってー、
その一発逆転に期待する漁師が多くてな、
「沖さー行ってーバクチしてくる」って言えば、
マグロ釣りの事ば言うのさ。
7月末頃から1月中旬にかけで、海男のロマンと命(生活)が
夢マグロを追って本州最北の海に絶える事なく、
船と一緒に乗っかってるのさ。
築地でも「大間産マグロ」てば、今だばブランド品だぁ。 何年か前にはキロ当たり4万5千円ってのもあった。
200キロ超のマグロだったがら、1匹で約1千万円だ。
解りやすく言えば「海の松坂牛」だ。「そんな美味しいものが食べられるなんて、幸せですね。」と私は言った。
しかし、マグロは生活の糧で、口に出来る事は少ないという。
しかし、ぬぅぁんと!!タダ!!という情報を得た。
大間町ブルーマリンフェスティバルって8月14日に
大間港で開催されるイベントでは、大間産、特大マグロの
解体ショー&試食が あって、刺身が無料なのだと。
こんな霜降り、寿司屋なら、1カン5千円はする。
こんなマグロを自分も釣ってみたい。ますます想いが強くなる。そんな私にゲンさんは、色々と優しく教えてくれる。
日本のマグロはそのほとんどが、輸入や遠洋の冷凍だぁらしい。
大間みてぇに生ってのは、少ねぇ。
これからは、遠洋のマグロ漁獲規制になって、大間のマグロは
それこそ、値上がりし続けると思る。そもそもミナミマグロやキハダ、メバチなどと、マグロは色々あるべ?
大間のマグロは本マグロと言われる
クロマグロだんだ。
このクロマグロはな、まんだ謎が多いんだが、最近になって、
太平洋のずーっと南で産まれて、その群れが北上するらしいんだど。
それが黒潮さのって、日本沿岸さ来る。
そいで親潮と黒潮のぶつかる東北北部にエサもあるしで、一大漁場となる。
しかしだ!何にもねぇトコに魚は居つかねぇんだ。魚礁といってな、虫やエサの豊富なトコに小魚が集まって、
それを食べる魚がまたそこに集まる。
すると最後にマグロみてぇなデッカイ奴も集まるのさ。
南ではブイを入れて人工的にこうした漁場を作る
「パヤオ」だったかな?そんなのがあるが、
大間は弁天島が天然にそうした場を作ってるのさ。
まさに「大間の宝海」と言われる由縁だべのお!しかも一番値段のいい、年末年始に獲れるして、大間のマグロぉ、
最高の値段だし、質もいい。なして質が良いがってば、秋に、たらふぐエサ食ったマグロが冬には
寒ぐなって、身に脂が乗るんだ!
それが、天然の海で運動してるして、身が自然に霜降りになるべさ?
それに・・・マグロの獲り方も工夫して、
質を高めて出荷してるんだ。ゲンさんの言葉の渋りに、すかさず私は
「その漁法はどういう獲り方ですか?」と言った。
「何?獲り方を教えろってが!」とゲンさんは怒ったようだったが、
色々、様々、企業秘密があるがら、知かへらいねんだ、ども、今回
お前さんだけには特別にマグロの一本釣り ば教えでやる!ここ大間だば、トローリングの事を「ふぎ」っていう。
まぁ「引き」が訛っただけなんだが、
船を走らせて仕掛けを引き流しするのさ。
これが普通のいわゆるマグロの一本釣りだのさ。もうひとつは「ジャンボ」ってーヤリ方がある。
ジャンボは口で言っても解らんだろうから、あそこの船を見てみい!
そう、あの船に長ーい竿がついとるじゃろ?
あれをジャンボって言ってな、電柱よりも長いグラスファイバー製で
値段は一本80万円以上もする。
仕掛けの一番先には木製の波しぶきを上げる「ヒコーキ」を付け、
その前には、延縄式に3〜5個の釣り針を下げる。
トビウオをエサに付けて、船で引くと、ヒコーキが波によって、
飛沫を上げながら上下するから、トビウオがあたかも水面を叩いて
逃げ惑っているように見せるんじゃ。マグロが食ったら、ジャンボからの糸に結わえてある部分を解けば
自然と一本釣りと同じ状態になる訳じゃな。
まぁ、細かい仕掛けの事や、実際の漁の事は、口で説明しても
ダメだべして、お前さん! 明日の朝、夜明け前にワシのとこへ来い。
マグロを獲りに連れでってやる!!