組合長「いや~、あのとぎ、なずなもバクバク食ってらったど!」。
ヤッコ「いいな~、食べでみてーなー」
組合長「あい?食ったごっとねーの?」
ヤッコ「だしてー(だから)、食ったごっとないってばぁーーー」
こんなやりとりが、何度も繰り返されていた。
とにかく私たちは、食ったことがないのよ~組合長ーーー。
食いたいのよ!食いたいのよ!
と、しつこくしつこく言い続けて21世紀が始まった。
そんなある日。
@2001年1月20日(土)@
とうとうアレがやってきた!
「いーーま、ノドツコ作ってらして!
1時間ぐらいしたら、持っていってけるど!」
組合長が電話をくれた。
ノドツコ。それは、マグロの首というか、
胃と口の間に付いている肉のこと。これがまた、
大間のマグロ漁関係者にしか手に入らない、
実に旨~~い部分。一般ピープルにとっては、幻の珍味なのだ。
出荷する前に、大間でマグロ本体から取り去ってしまう部分なので、
築地に行ったって、ノドツコはないのですよ~みなさん!
あのなずなちゃんも、夢中になって食ったというノドツコ。
とうとうそれが、私たちの前にやってきた!
組合長が、ハスキーボイス絶好調で、
何やら説明してくれているが、目の前のブツのすごさに心を奪われ、
ボーとしている私たち。
だって、すごいんだよ、これがっ!
ほれっ、これを見るのだーーーー。
肉だよ、肉!うまそ~~!
@2001年1月21日(日)@
緊急試食会
マグロの肉を食らった日!
組のアジトであるエビ姉んちに、午後5時集合。
何人集まるかで、自分の口に入る肉の量がおのずと決まる。
「別にさー、どんな味なのかわかる程度でいいのよー」
とか言い合いながら、お互いを牽制し合う隊員。
ここいらでは、こういう人たちを「ほいど」と呼んでいる。
さてさて、本日の素材をご紹介いたしましょう。
左上の濃い色の肉が「心臓」。その下のプリンとしたものが
「ベン(弁?)」と組合長が言っていたもの。
中央のひときわ鮮やかな肉肉しいのが「ノドツコ」。
右端に並んでいるのが「ほっぺ」である。
ノドツコだけでなく、こんなにいろんな肉を持ってきてくれたのだ。
こんなすんばらなものを頂くのだから、調理だって手を抜けない。
七輪じゃー、七輪を出せ~~ということになった。
エビ姉んちが煙にまかれたが、そんなこと誰も気にしちゃいない。
目の前に展開されている肉の焼け具合に、
全神経が集中しているのだ。
調味は「塩」「コショウ」、つけ合わせ「ネギ」「ビール」、以上。
あくまでも、肉本来の味を感じるのだ。
エビ弟が口火を切った。
「ノドツコ、いきま~~す!」
「どう?どう?」他の隊員がつめ寄る。
聞いてねーで、自分で食えよ!って感じである。
「う~ん、ふしぎ、うん、魚の味もする、うん、うま~い!」
聞く方が悪かったとばかりに、みんないっせいに箸をつけ始める。
「ノドツコいきま~す!」
「ノドツコいきま~す!」
「心臓いきま~す!」「ベンいきま~す!」
なぜかみんな、いちいち宣言してから口に入れていた。
思い思いに、それぞれの肉の味や歯ごたえを噛み締める。
ちなみにこれは、「ほっぺ」が焼きあがったところ。
かりっとするまで焼いた方がうまい!
軟骨っぽい部分のコリコリと、それに引っ付いている肉、
そしてゼラチン質が、絶妙のハーモニーなのだ。
他の肉に関しても、あえて言葉で表現してみると。
ノドツコは、やわらかい牛肉のような歯ごたえに、
まさに「魚の肉」というようなジューシーなお味。
心臓は、さっぱりとしたレバーという感じ。
一方ベンは、くせがなく、噛みごたえのある鶏皮って感じかなー。
隊員一同、生まれて始めて出会ったお味だった。
結局、乱入者もなく、食いまくったほいど隊員5人。
大満足で、緊急試食会は終焉へと向かった。
最後の一枚「心臓」をほおばるエビ姉。
「組合長ぉー、ありがとぉー」という顔で食って!
と言ったら、こうなりました。